リスクとリターンの測定,ファイナンス分野での主要テーマであります.資産価格(株価)を一定の離散時間ごとに観測し,収益率タームで表現し,その分散(標準偏差)をリスク,平均をリターンとして捉え,これまで様々な実証分析が行われてきました.各企業の株価時系列データさえ得られれば,企業名は anonymous として取り扱われてきました.
本報告においては,企業の情報を利用しない,そのような収益率タームでの分析は,一般的にはCAPM(資本資産評価)理論と相容れないものであることを例示しました.そして,理論と整合的なモデルとして,配当モデル,タイプBモデル,増資モデルを提示しました.
各企業のリスクに対応した収益率の計算によるデータ整理が必要です.
資本資産評価理論(CAPM)の検証について,ノックアウト・パンチを放った《ロールの批判》に対する解答論文を意図しています.ロールは,CAPMのキーとなる市場ポートフォリオの観測について,すべての資産から計測されたものでなければ,理論をフォローした実証結果を得ることができない,ことを論じたものでありました.
本報告においては,リターンとリスクとのトレード・オフ(危険許容度)を考慮することにより,部分的資産集合の観測からでも,市場ポートフォリオに充分近似可能な代理ポートフォリオを見出すことができることを提示しています.
観測資産数の増加に伴い,シャープの尺度が,(1)どんどん増加していく,と,(2)収束していく,の二つのシミュレーション結果を提示し,後者のための必要十分条件が漸近的無裁定条件が成立することである,ことを論じています.
漸近的無裁定評価理論が、ポートフォリオ理論で馴染みの平均−分散平面上において、いかなる形で表現されるものかについて検討した。無危険利子率が存在する場合、しない場合、そして、各資産の投資収益率に関する分散共分散行列の特異な場合、等について、APTの検証という観点から、議論を展開した。
代理市場と真の市場ポートフォリオを仮想モデル(ファクターモデル)で生成し、その相関係数について検討した。その結果、1ファクターモデルであれば、両ポートフォリオが十分に分散化されたポートフォリオであるならば、その相関係数は1に近づき、2ファクターモデル(マルチ・ファクターモデル)においては、代理市場ポートフォリオの代表性が認められるとき、相関係数が1に近づくことを確認した。
日本経済のダイナミズムが失われつつある状況下で、企業のスリム化、リストラ化が進行しつつある。そのことが、従来の日本型情報処理(多くの中間的意思決定者によるリスクの共有化もしくは分散化に伴う責任の軽減化の環境)を崩壊させている。静学的コストの観点からは、中間管理層のスリム化は好ましいものかも知れないが、企業のダイナミズムを生成するリスクへの兆戦という観点からは、スリム化された日本的企業においては、その機能が生成されないことになる。リスクを背負える空気を醸成していたのが、実は日本型情報処理ではなかったか。