タンジェンシー・ポートフォリオの振舞い
――「Rollの批判」を克服できるか――

滋賀大学経済学部 堀本 三郎
彦根論叢玉木興乗教授退官記念論文集(第311号)掲載


 

  T.はじめに

 現在の株価は,その企業の価値(将来の成果に対する割引価値として計算されるものと考えられる)を正しく評価しているものであろうか. これまで,絶えず問い掛けられてきた疑問であった.それに対するひとつの解答が,1960年代中頃,Sharpe[13],Lintner[8],Mossin[10] らによる資本資産評価理論(Capital Asset Pricing Model:CAPM )において与えられた.それは,危険資産市場において取引されているすべての資産について, 将来の成果に対する期待値と標準偏差が市場参加者であるすべての投資家によって共有されるならば,均衡市場においては各株式の期待収益率が

と表現される,ことを述べたものであった.ここでは,それぞれ第i株式の(予想)収益率, 無危険資産収益率そして市場ポートフォリオの(予想)収益率であり, または市場ポートフォリオの上への第i株式の回帰係数である.

 彼らは,各株式のリスク・プレミアムの相違が当該株式の収益率と市場ポートフォリオの収益率の共分散のみに依存するものであることを明らかにした. 市場ポートフォリオというキーワードを見出し,その精神を基に,それ以後数多くの実証分析がなされてきた.幸いにも,株式データは潤沢であった. あてはまりの度合いは,他のミクロ実証分析と同じく,決して良いものではなかったが,‘ベータ値を知る者が市場を征する’とばかりの勢いであった. そうした分析が定着しだした頃,冷水を浴びせかけた論文《 Roll[11] 》が出現した.いわゆる,「ロールの批判」であった.

 ロールの批判の骨子は,(1)式における市場ポートフォリオは株式だけではなく,不動産,骨董,金,銀,宝石, 人間資産等を含むあらゆる危険資産から構成されねばならない,との主張であった.それまでの実証分析においては, 一部分の株式から構成される(代理的)市場ポートフォリオが採用されていた.そのような状況下では, 採用された代理変数としての市場ポートフォリオmが効率的フロンティア上に位置するならば, リスクとリターンの線形関係式は常に成立することであり,それは,真の市場ポートフォリオMに関する(1)式について何らの記述もしていない, というものであった.

 すなわち,図1にあるように,採用された代理市場ポートフォリオmが効率的フロンティア上にあるとしても, 真の市場ポートフォリオMは効率的ポートフォリオから離れている場合も有りうる.いっぽう,図2のごとく, 真の市場ポートフォリオは効率的フロンティア上にあるにもかかわらず,採用された代理市場ポートフォリオmは効率的ポートフォリオからかけ離れているかもしれない. ともかく,検証されるべきことは,真の市場ポートフォリオMが効率的ポートフォリオであるという命題についてであり, 真の市場ポートフォリオMが観測可能でない限り,CAPMに関する実証分析は意味をなさないことになる.実際上, われわれはそこまでのデータを手にすることは無理である.したがって,CAPMは理論的には検証可能であるが,事実上不可能である. これが,ロールの結論であった.

 その後,証券界に近いジャーナルにおいては,「ベータは死んだか?」という特集が組まれたほどであった. 学会ジャーナルにおいてもCAPMからAPT(裁定評価理論)へと関心が移って行った.

 (1)式で表現されるCAPMのメリットは,何よりその『簡単さ』にあった.その導出過程はともかく, 均衡式は誰にでも理解可能なものであった.市場モデルと混同されながら,多くの研究者や証券マンの支持を得たとしても不思議ではなかった. ところが,よく言われるように,証券市場に万能薬はないのである.その効力にいくつかの疑問が提示されているときの爆弾論文である. 瞬く間にCAPM実証分析はその効力を失うと共に,CAPM信奉者はその理論を神棚に祀り上げるより方法がなかった.ベータは死んだのである.

 しかし,悲観的になる必要はない,というのが本稿の目的である.計量分析者がすべての危険資産を観測可能でない限り, そのCAPM実証分析は意味を持たないというのがロールの批判であった.筆者の主張は, 『すべての危険資産を観測する必要はない.もし資産市場においてCAPMが成立しているならば, 部分的観測からでも充分近似可能な実証分析を行うことが可能である』,というものである.すなわち, 図2に示されている状況は,ある一定の条件下では,有り得ないことを示すことができる.その論拠を提示することが本稿の課題である.

 U節においては,平均=標準偏差平面上におけるタンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度を採り上げ, 数値実験によりその資産数の増加に伴う変化について対称的な二つの例を紹介する.V節においては, 資産数が増加するとき効率的フロンティアがどのように変わっていくか,そして, われわれの関心であるタンジェンシー・ポートフォリオがどのような動きをするかについてが数式の展開を伴って検討される. これらの議論を通じて,漸近的無裁定条件が成立するならば,資産数の増加とともに, タンジェンシー・ポートフォリオが平均=標準偏差上のある点に収束していくことが示される.そして,W節においては, シミュレーション実験により,部分的観測から,かなりの精度で真のタンジェンシー・ポートフォリオが近似可能であることを確認する.


U.シャープの尺度

 早速,おおまかな洞察から述べることにしよう.ロールの主張する真の市場ポートフォリオ――実際上定義することはほとんど不可能であるが―― とわれわれが観測できる代理市場ポートフォリオの相違は資産数にある.前者は N 個の資産から, そして後者は n 個の資産から構成されるものと考えられる.当然,,と予想される.要は, 資産数の相違により,何がどれ程異なるかについて把握することが必要となる.われわれは,周知のタンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度に着目する.

 資産数が増えるとき,効率的フロンティアーがどのように変化していくのであろうか.一般的には, 図1および2に示されているように,効率的フロンティアーは左方に移動していくことが知られている. ロールの主張する検証命題は,『真の市場ポートフォリオがタンジェンシー・ポートフォリオ―― 危険資産からなる効率的フロンティアーに対して,期待収益率軸上の無危険資産収益率を通る接戦を引くとき, その接点に位置するポートフォリオ――に位置する』,ということであった. タンジェンシー・ポートフォリオに対する接線勾配をシャープの尺度と呼んでいるわけであるが,それも, 効率的フロンティアーの左方移動に伴い,資産数の増加関数となることが知られている.

 とりわけ,最も大切なことは,その値は,市場に参加している投資家のリスクとリターンに対する許容度によって決まってくる, ということである.したがって,シャープの尺度が資産数の増加に伴い, 比例的に大きくなっていくということはリスクとリターンのトレード・オフを前提とする限り有り得ないことである. すなわち,1%のリスクに10%,否100%のリスク・プレミアムを要求する市場は現実的であるか,という問い掛けである. 市場が均衡しているならば,タンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度には上限があるはずだと考えることは自然であろう. 何故なら,それがリターンとリスクのトレード・オフを表現している尺度であるから.

 シミュレーション実験において生成された平均そして分散共分散行列を例にして検討してみよう. 各株式の投資収益率データを用いてタンジェンシー・ポートフォリオの投資比率を計算してみると, 負の値を含んでいることが多い.さらに,ある株式への投資比率が1以上という場合もしばしば経験される. そこで,われわれはそのような状況に近い形で,データ生成を試みた.そして, そうして生成された1000個の危険資産の期待収益率と分散共分散行列の数値を用いて,資産数が増加していくとき, タンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度がどのように変化するかについて試算した. その結果は表1に示されている.資産数の増加と共に,シャープの尺度も増加している. この例では,1%のリスクに対して,10%のリスク・プレミアムが支払われるポートフォリオが存在することになる. 通常のリスク許容度の範囲外にあると判断するのが妥当であろう. 「より多くの資産を観測すれば,真の市場ポートフォリオが効率的フロンティア上に存在するのが確認できるはずだ」,という論法は説得力を持たない. 何故なら,その時にはより大きなシャープの尺度を保証する(真の市場)ポートフォリオを手にしていることになるからである. それは,現実のリスクとリターンのトレード・オフ外の数値であろう. 表1の結果が部分的観測に基づくものであるとしても,われわれが手にした収益率データからは, 「CAPMが成立していないものと判断できる」,という叙述の方がより説得力を有することになる.

 表1のデータはタンジェンシー・ポートフォリオの投資比率が負の値を含む形で生成されていた. CAPM理論はその投資比率がすべて正の値になることを教えている.そういう場合は,シャープの尺度はどのように変化するのであろうか. このことを検討するために,1000個の危険資産から構成されるタンジェンシー・ポートフォリオの投資比率が等比率となるべく期待収益率と分散共分散行列を生成してみた. そして,資産数の増加に伴うタンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度を計算した.その結果が表2にある. 表1との明らかな相違は,数値の大きさを別とすれば,シャープの尺度の増加の度合いにある. 資産数50と1000の場合のシャープの尺度の相対比は,表1においては約0.3となるのに対して,表2においては0.97となっている. 後者の結果は,シャープの尺度の上限が存在することを例示している.『もしCAPMが成立している状況であれば, すべての資産を観測せずとも,部分的観測により,市場がリスクとリターンのトレード・オフをいかに評価しているかについて言及が可能となる』,という筆者の主張の源泉がここにある.

 これらの例は,偶然もしくは意図的データ操作により生じたものであろうか.もしくは,これらの例示を生成する規則的メカニズムがどこかに存在するのであろうか. 次節における,資産数の増加による効率的フロンティアの変化についての数式的展開により,その解答が与えられるであろう.


V.危険資産数nと(n+1)の効率的フロンティア

1.効率的フロンティアの幾何学的類型

 資産数の増加に伴う効率的フロンティアの移動を確認するため,まず,危険資産数nと(n+1)の場合の効率的フロンティアの幾何学的移動の類型化から始めることにする.

 (n+1)次元の危険資産の収益率ベクトルは

の確率分布にしたがうものとする.このとき,(n+1)個の危険資産から構成される効率的フロンティアが,平面上において

と表現されることはよく知られている.ここで,と記すと

と表される.

 いま改めて,n個の危険資産からなる効率的ポートフォリオの分散を, (n+1)個からのそれをと記すことにしよう. このとき(3)式および(4)式から(6)式により,それぞれの効率的フロンティアの移動は

において確認される.

 の値により,図3の(i)から(iv)の4つのパターンに類型化できる. 類型(i)が一般的であるが,分散共分散行列が という特殊な形を有しているとき, 効率的フロンティアが類型(ii)と(iv)の変化に分類されることがわかる.本稿においては, 以降 という仮定のもとで議論を進めていくことにする.

2.タンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度

 資産数(n+1)のとき,タンジェンシー・ポートフォリオの収益率は

と表される.そして,のとき,(9)式は

と,2つのポートフォリオのポートフォリオという形に分解される.ここで,

である.まさに,(10)式はタンジェンシー・ポートフォリオの漸化式を表現しているものでもあり,その漸化式を解いていくと

となり,タンジェンシー・ポートフォリオはの1次結合として分解されることになる.

 実は,ポートフォリオはある特定の性質を有している. すなわち,n個の危険資産からなる任意のポートフォリオとの共分散が0になる,というものである. 実際,任意のポートフォリオをとすれば

となる.(12)式に戻れば,タンジェンシー・ポートフォリオは,初期項を除けば,それぞれ独立なポートフォリオの1次結合として表現されている. このことが重要な役割を果たすことになる.

 もっと直截的には,タンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度を分解すれば,より明快な形が容易に導出される.

 いま,(n+1)個の危険資産から計算されるシャープの尺度を と表すことにしよう.このとき,(9)式より

がえられる.ここで(11)式より

であるから,(13)式の最後の式の第2項は,それぞれ独立なポートフォリオのシャープの尺度の2乗和となっていることが知れる.

 U節において記したように,市場において容認されるリスクとリターンのトレード・オフが存在するためには,タンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度が有界であらねばならない. すなわち(13)式からわかるように,nが大きくなるとき,が成立せねばならない.

3. 漸近的無裁定

 (12)式にあるように,タンジェンシー・ポートフォリオはそれぞれ独立なポートフォリオの1次結合として表現される訳であるが, われわれは,この独立なポートフォリオを利用して,漸近的に分散(標準偏差)が0に近づくポートフォリオを作成することが可能となる. すなわち

とすれば,このポートフォリオの平均と分散は,(14)式より

と計算される.

 ここで,ポートフォリオ比率として,十分に分散化されたポートフォリオ比率を考えれば,のとき

であるから

となるポートフォリオが作成される.もし,漸近的無裁定条件が成立しているならば

であらねばならない.

 つぎのように書き換えることも可能である.すなわち,自己資金0の裁定ポートフォリオについても, (17)式の条件のもとではその分散は0に近づき,同様の議論で,漸近的裁定機会の不存在のためには

が成立せねばならない.コーシー・シュワルツの不等式より

であるから,のとき,上式右辺第1項が0に近づくすべての系列に対して

が成立するならば,(21)式右辺は0に近づくことが保証される.

 以上の結果によりわれわれはつぎの命題を得る.
[命題]
 のもとで,漸近的無裁定の成立とタンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度の有界性は同値である.

(証明)  (13) 式および(22)式より,シャープの尺度の有界性は漸近的無裁定条件を満足する. いっぽう,シャープの尺度が無限大に発散するとき,(21)式の右辺第1項が第2項の発散速度より遅い速度で0に収束するならば,(21)式左辺を0で抑えることができない系列が存在することになる. すなわち,漸近的裁定機会が存在することになる.(証明終わり)

 この命題は,U節の表1,2に対して,前者は漸近的裁定機会が存在するであろうことを暗示し,いっぽう後者についてはその非存在を示唆するものである. 資産数の増加に伴う,両者のシャープの尺度の増加割合の相違が上記の命題により説明されたことになる. CAPMの成立は,当然漸近的無裁定機会を成立させる収益率系列の部分集合として位置づけられるものであろう. したがって,もし,真の市場ポートフォリオがタンジェンシー・ポートフォリオの位置に存在するならば, 部分的観測による収益率データから,相関係数が1に近いタンジェンシー・ポートフォリオを見出すことが可能である.

 CAPMは有限個の危険資産を対象にした理論であり, 無限の世界での議論がどの程度成立するか甚だ疑問である,という異論が頭をかすめるかも知れない. もともと,平均−標準偏差平面上の議論は,基本的に連続的なものであり,いかような絵柄でも作成することが可能である. したがって,質的な区別のための線引きは有限の範囲内では見いだせない.しかしながら,そのような状況にあっても, 市場において許容可能なリスクとリターンのトレード・オフ尺度を考慮することにより, シャープの尺度が収束するといえども,たとえば1%のリスクに10%のリスク・プレミアムという現実は棄却されることになるであろう.

 幸いにも,等ウェイトのポートフォリオの分散が資産数の増加と共にどのように変化するかについて,実際の収益率データを用いて計算された図が多くのテキストブックに掲載されている. 資産数20〜30において,ポートフォリオの分散化効果がフラットになる傾向があることをわれわれは承知している. U節の表2においても収束のスピードが速いことを既に確認している.

 とは言え,分散共分散構造そして市場ポートフォリオのウェイト等の違いにより,収束スピードが影響されるかも知れない. 次節においては,U節と同じく1000個の危険資産についての収益率パラメータ(分散共分散行列が2ファクター・モデルに従う)を作成し, 市場ポートフォリオのウェイトの相違による収束スピードへの影響についてのシミュレーション実験結果を報告する.


W.シミュレーション実験

 タンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度の資産数の増加による移動について, その値に影響を与えるものと判断されるパラメータについていくつかの状況を設定し,シミュレーション実験を試みた. ここでは,真の市場ポートフォリオ(1000個の危険資産から構成される)がタンジェンシー・ポートフォリオであるとき,資産の部分的観測から計算されるシャープの尺度の移動に着目してみた. 紙幅の関係上,網羅的実験デザインのもとでの結果について報告することは別稿に譲るとして,ここでは,その代表的1例を報告することにする.

 分散共分散行列に2ファクター・モデルを採用した.すなわち

である.ここで簡素化のため,は対角行列とした. 二つのファクター係数については,それぞれ区間[0,4],[-4.13,5.81]の一様乱数を派生させて作成されたものである. そして,の対角要素については,区間[4,16]の一様乱数派生により作成した.

 各資産の期待収益率については,付録のCに従った.ただし,タンジェンシー・ポートフォリオ(市場ポートフォリオ)の投資比率については,各危険資産の市場価値(mv)を, (C1)mvi=1,(C2)mvi=i,(C3)mvi=i2 の3通りに設定し,そのもとで計算された. それぞれの場合について,同一の分散共分散行列,そしてという想定のもとで各資産の期待収益率が作成された. 市場ポートフォリオのウェイトの相違が部分的観測からのシャープの尺度にどのような影響をもたらすかを観察するためである. その結果はつぎのごとくである.

 ここで,シャープの尺度(1)は,各資産数からのタンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度であり, シャープの尺度(2)は,各資産数から構成される代理市場ポートフォリオのそれである. そして,相関係数は,各ポートフォリオの真の市場ポートフォリオとのそれである.

 (C1)から(C3)のいずれのケースにおいても,V節の命題が成立していることが確かめられる. さらに,真の市場ポートフォリオがタンジェンシー・ポートフォリオ上に位置しているならば, われわれの結果では,100個の危険資産を観測することにより,それは,資産数で言えば, 全体の10%であり,総市場価値で言えば,(c3)の場合は全体の0.1%であるが, 真の市場ポートフォリオとの相関係数が0.98以上の代理市場ポートフォリオを手にすることが可能である.


X.おわりに

 シャープの尺度は資産数に関する増加関数である. 資産数が増えるとき一体どこまで増加していくのであろうか?  現実の収益率データから計算されるタンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度は可なりのリスク・プレミアムを要求しているのだ. ロールの教えに従って,もっとたくさんの資産を観測すれば,・・・. 否,もしCAPMが成立しているならば,リスクとリターンのトレード・オフの尺度となるシャープの尺度は市場の許容範囲内に存在するはずである. ところが,・・・.

 これがロールの批判に対する筆者の問題意識であった.その解答が不十分ながら本稿において与えられたものと思う. それは,「もし市場においてCAPMが成立しているならば,危険資産の部分的観測から作成された代理市場ポートフォリオを用いても, 充分近似可能な実証分析が可能である」,というものである.W節のシミュレーション結果は,如実にそのことを物語っている. そして,タンジェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度の収束性を保証するのが漸近的無裁定条件である.


【付録】シミュレーション実験のデータ作成法

 1ファクター・モデル(表1,2のデータ作成法)
@ 分散共分散行列:,(は対角行列).
A 区間[-0.5,4]の一様乱数からを作成する.
B区間[8,24]の一様乱数からの対角要素を作成する.
以上の手順で分散共分散行列を作成した.表1,2において同じ分散共分散行列の数値が使用された.
C 期待収益率:,(Best & Grauer[1]を参照).
はリスク許容度パラメータであり, はタンジェンシー・ポートフォリオの投資比率ベクトルである.
表1: .
表2: .